フェルメールの作品はまさに大人の知的パズル

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2018年に日本で開催されたフェルメール展では、東京と大阪で120万人が来展するという驚異的な動員数を叩き出し、日本でもっとも集客力のある画家のひとりであるフェルメール。

 

ただ見るだけなんてもったいない!!

 

知ると面白さが何倍にも増すフェルメールの作品世界をご紹介いたします。

 

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著者:ビー玉さま
Twitter:@beedama_lab
ブログ:大人の美術館
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よろしければ最後までお付き合いください。

フェルメールは忘れられた画家だった

 

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は17世紀オランダを代表する画家です。

 

長らくその存在を忘れられており、19世紀に印象派が登場するまでは、ほとんど注目されることもありませんでした。

 

そのため、残っている資料もごくわずかで判っていないことも多い画家なのです。

 

現在フェルメールの作品だと確定しているものは全部で35点。そのうち故郷オランダに残るのはわずか7点。

 

フェルメールの死後にオランダ経済のバブルが崩壊したため、国外に持ち出されて世界各地に分散されてしまったからです。

彼の描く絵画は一見すると日常の風景を切り取ったように見えるため、絵に詳しくない方がみても充分楽しめます。

 

だけど、じっくり鑑賞すると更にドラマチックで面白いのです。

 

例えば・・

 

『手紙を書く夫人と召使』には本当は何が描かれているのか?

 

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裕福そうな夫人が手紙を書いている後ろで召使が窓の外を眺めている。

 

この夫人はいったいどんな手紙を書いているのか?

 

私が初めてこの絵を目にしたとき、絵は少し目線より高い位置に展示されていました。

 

おそらく、床の手紙に注目させるためではないかと思っています。

 

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画面中央下の床にはくしゃくしゃにされた手紙が落ちています。

 

この手紙に封がされていたのであろう赤い蝋(ろう)が落ちていて、手紙は夫人が書いたものではなく、誰かから送られてきて急いで開封されたのであろうことがわかります。

 

ただならぬ雰囲気にふと目を上げると誰かの不在を象徴するように空の椅子。

 

差し込む光に誘われて視線を移動させると一心不乱に手紙を書く夫人。

 

 

この夫人が書く手紙の内容がどんなものかというヒントは絵の中に描き込まれた「壁に飾られた絵」にあります。

 

この絵の中の絵は不自然なくらいの大きな面積を独占しており、すこし違和感を感じませんか?

 

それは『手紙を書く夫人と召使』を読み解くための重要なアイテムだからです。

 

壁に飾られている絵のテーマは「モーセの発見」

 

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これは旧約聖書に登場する物語。

 

エジプト王は増えるイスラエル人の勢力拡大を恐れて「生まれてくるイスラエル人の男子を皆殺しにせよ」という命令を発します。モーセの母は、この命令に背き息子を川に流します。

 

川に流された幼児モーセを発見して育てたのが他ならぬエジプト王の娘。

 

最終的にこれは「和解」の物語として人々の間で人気のテーマになっていき、当時の人々はこのテーマに気持ちを鎮められ癒しを感じていました。

 

そのことから、手紙は夫もしくは秘密の恋人に「許しを乞う」内容なのではないかと想像できます。

 

ただ、この壁にかかった絵の効果は、手紙の内容を暗示しているだけではないのです。

 

動から静に誘導する動線がみごと!!

 

 

鑑賞者は床に捨てられた手紙から夫人までの動線をまるで「昼ドラ」のようなドキドキ感を持ちつつドラマチックな展開に想いを馳せます。

 

そして、壁にかけられた「モーセの発見」に目を移して高揚した気持ちが鎮まり、召使の「私たちには関係ないことよ」というような視線に誘導されて部屋の喧騒から離れて柔らかい陽が差し込む窓の外へ向かいます。

 

1枚の絵の中に激しい衝動とおだやかな静けさが同居し、見るものの感情を光の中に溶けこませるみごとな動線を描いているのです。

 

個人的にはフェルメールの最高傑作といっても過言ではないと思っています。

このような仕掛けがフェルメール作品にはよくみられます。

 

『ワイングラス』は意味深な男女の絵

 

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この『ワイングラス』という絵にも風刺の効いた仕掛けがあります。

 

実はこの絵は単純に男女がお酒を楽しんでいる絵ではありません。

 

手前の椅子にはリュートという楽器が配置されていて、これじつは「快楽をともなう恋愛」を暗示しているのです。

 

男性からつがれたお酒を飲み干している女性は、男性からの愛を受け入れOKということなのです。

 

だけど、窓のステンドグラスに注目してみると・・・

 

甘い物語に一石を投じる風刺

 

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画像ではわかりにくいかもしれませんが、右手に手綱をもった女性が描かれています。これは「節制」を象徴しており、男性の誘いに乗ろうとしている女性を戒めています。

 

なかなか意味深で面白い絵ではありませんか?

 

どうでしょう、「知る」と最初に観た絵のイメージが少し変わりませんか?

 

絵画はただ見るだけでも楽しめますが、「知る」ことでさらに楽しさが増す。まさに大人の知的パズルなのです。

 

フェルメールの絵にはこのようなパズルがたくさん仕掛けられていますので、機会があれば小道具に注目して鑑賞してみてください。

 

 

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